べっ甲の歴史
べっ甲細工とは

べっ甲細工とは、南方の海域やカリブ海、インド洋の海域に生息している海亀の一種、玳瑁(タイマイ)の甲羅・爪・腹甲を加工し、かんざし・櫛・メガネ・ブレスレット・ブローチなどの装飾品としてつくられたものを我が国では、べっ甲細工と呼んでいる。しかし、本来べっ甲と玳瑁は、別であり、区別するのが本当である。
玳瑁とべっ甲
1603年長崎で日ポ辞書(*1)編集されるまでは、べっ甲は、「薬用の亀」、タイマイは、「細工物」を作る亀の甲羅として区別をして呼んでいたと考えられる。
ではなぜ、混同されたか?
べっ甲は、そもそも薬として使用される亀の甲羅であったが、タイマイも薬として使用でき、タイマイ自体、日本に生息しておらず、タイマイ自体が持ち込まれるわけではなく、タイマイの甲羅のみが細工物として持ち込まれ、べっ甲亀と同じ亀だと思われていたためだと考えられている。つまり両者を混同して呼んでいたようだ。後で、べっ甲亀と玳瑁は、学術的に違うことがわかるのだが、その時は、「玳瑁=べっ甲」として通っていたため、今日でも玳瑁と呼ばずべっ甲と呼んでる。
また、本草和名(*2)に「亀甲 和名宇美加女(うみがめ)」としている。
玳瑁は海亀の一種でもあり、海亀と呼んでも差し支えない。このことは五絃琵琶も「亀甲鈿」捍撥ではなく、正式には「玳瑠鈿」とすべきところを、亀甲としているのは海亀の甲は全て亀甲という言葉で総称され、殊更に我が国では玳瑁・鼈甲という厳密な区別をたてず、亀甲と玳瑁は同じ意味をもつものとして使用されることを物語っている。
また、一般的には、玳瑁はただ海亀の一種であるとの説明をきき、また鼈甲という字が難しく、「べっこう」 という言葉は、単に海亀の甲のことと解していたのではと考えられる。この事実はすくなくとも十六世紀後半には、「べっこう」は「亀の甲」と同義語として使用していたものである。そこには鼈甲も単に 「亀の甲」とすれば玳瑁も亀の甲であり、玳瑁=鼈甲のよびかたがなされていたと考えられる。
タイマイとアカウミガメ
★タイマイ
分布 | インド洋、大西洋、太平洋 |
繁殖地 | インドネシア、セーシェル、モルディブ、西インド諸島など |
体長 | 甲長53-114センチメートル。体重30-70キログラム。 |
特徴 | 椎甲板や肋甲板の後部が、その後ろにある甲板の前部と重なる。肋甲板は左右に4枚ずつ。縁甲板の後縁は鋸状に尖る。背甲の色彩は黄色で、黒褐色の斑紋が入る。これにより海中のサンゴに擬態していると考えられている。腹甲の色彩は黄色。頭部は細長く、吻端が尖る。前額板は4枚(2枚ずつ)。顎を覆う角質(嘴)が発達する。頭部や四肢の背面は黄色く縁取られた黒褐色の鱗で覆われ、腹面は黄色。 |
参照:Wikipedia
★アカウメガメ
分布 | 大西洋、太平洋、インド洋、地中海 |
産卵地 | アメリカ合衆国東部、オーストラリア北部、オマーン、ギリシャ、トルコ、日本、ブラジル、南アフリカ共和国などが確認されている。日本国内では鹿島灘、能登半島以南で繁殖する。年に100回以上の産卵例がある産卵地として遠州灘海岸、和歌山県南部、日南海岸、屋久島などが確認されている。 |
体長 | 甲長65-100センチメートル。体重70-180キログラム。 |
特徴 | 背甲は扁平。項甲板と第1肋甲板は接する。肋甲板は左右に5枚ずつだが、4枚ずつの個体や左右非対称もいる。背甲には3つずつ筋状の盛り上がり(キール)があるが、成長に伴い消失する。背甲の色彩は赤褐色、褐色。下縁甲板は左右に3枚ずつで、小孔はない。腹甲の色彩は淡黄色。 |
参照:Wikipedia
(*1)『日葡辞書』(にっぽじしょ、葡: Vocabulário da Língua do Japão)は、キリシタン版の一種で、日本語をポルトガル語で解説した辞典である。1603年 - 1604年にかけて長崎で発行された。
(*2) 本草和名(ほんぞうわみょう)とは深根輔仁撰による日本現存最古の薬物辞典(本草書)。